ゴルフクラブの振動数とは

ゴルフクラブの振動数とは、ゴルフクラブのシャフトの硬さを示す数値です。硬いシャフトが装着されたクラブは、速い速度で振動するため、振動数の数値は大きくなります。軟らかいシャフトが装着されたクラブは、ゆっくりと振動するため、振動数の数値は小さくなります。

シャフトのフレックスと振動数の関係

R/S/Xは当てになりません

シャフトの硬さを示すものとして、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、フレックス(R/S/Xなど)ですね。しかし、驚いたことにフレックスは業界で統一した基準がないのです。フレックスは、各メーカーの基準が曖昧なので、シャフトの硬さを示す絶対的な基準にはなり得ません。

「アスリートモデルのRがアベレージモデルのSよりも硬い」というようなことは、よくあることです。また、また、近年はメーカーがシャフトをどんどん軟らかくする傾向にあり、レディースクラブなみに軟らかい(振動数が小さい)「S」シャフトなどが実在します。

振動数なら嘘をつきません

プレイヤーがシャフトから感じる硬さ・軟らかさのフィーリングを最も端的に示すのは振動数であると言われています。振動数は、シャフトの硬さを示す確かな基準になり得ます。シャフトが硬ければ、その分だけ振動数の数値が大きくなり、シャフトが軟らかければ、その分だけ振動数の数値が小さくなります。

稀に雑誌などで「振動数はシャフトの手元側の硬さを示すものだ」と書かれているのを目にすることがあります。これは物理学的に完全な誤解です。クラブの振動は波であり、波のエネルギーはシャフトの手元から先端まで伝搬しますので、振動数はシャフト全体の硬さを示します。

振動数フローの重要性

ゴルフクラブの適正な振動数フローとは

振動数は、ゴルフクラブの長さとセットで考える必要があります。下のグラフで、縦軸は振動数、横軸は長さ、紺色のドットはアイアン、ピンク色のドットは、ユーティリティー、フェアウェイウッド、ドライバーを示します。

適正な振動数フロー

ゴルフクラブの長さと振動数の関係をグラフにした時に、適正な振動数フローのクラブセットでは、ゴルフクラブが長くなれば長くなるほど、振動数の数値は規則正しく小さくなっていきます。

不適正な振動数フローのクラブセットの弊害

不適正な振動数フローのクラブセットの弊害は、スイングテンポに決定的な悪影響をおよぼすことです。

これを理解するために、スイング中のシャフトの振動(しなり)について、ご説明します。下の写真をご参照ください。

シャフトの振動(しなり)

スイングにおけるシャフトの挙動

ゴルフのスイングにおいて、シャフトはしなります。シャフトのしなり方が判りやすいように、写真に赤で補助線を入れました。トップ直前まで真っ直ぐだったシャフトは、切り返しの直後から、左写真のようにしなり始めます。そして、ダウンスイングの初期の間、シャフトはさらに大きくしなっていきます。

その後、ダウンスイングの中間付近の「リリース」のタイミングを境に、シャフトの「しなり戻り」が始まります。そして、インパクト直前では右写真のように、切り返し直後にしなった方向とは逆方向にシャフトがしなります。

ゴルフのスイング中のシャフトの「しなり」と「しなり戻り」の挙動は、必ずこうなります。つまり、トップからインパクトにかけて、ゴルフクラブは一往復の4分の3だけ振動する訳です。振動数の数値は、シャフトがある一方向にしなって、その反対側にしなり戻るまでの時間の関数です。従いまして、振動数は、切り返しからインパクトまでのテンポを間接的に示す数値と言えます。

振動数フローが不適正だと何が起こる?

プレイヤーは、シャフトの「しなり」と「しなり戻り」のテンポを敏感に感知しながら、スイングを行ってしまいます。素早くしなり戻るクラブを振ったときには、素早いテンポのスイングをクラブに強いられ、ゆっくりしなり戻るクラブを振ったときには、ゆっくりとしたテンポのスイングをクラブに強いられてしまうのです。

振動数が、クラブごとに不規則に変化していると、何が起きるでしょうか? キャディバック内の異なるクラブを振る度に、不規則な振動数を持つクラブ達は、不規則に異なるスイングテンポをプレイヤーに強いるのです。ラウンド中のスイングテンポは不規則な振動数を持つクラブ達によって滅茶苦茶に狂わされ、結果的にミスショットを量産してしまうのです。

練習場では上手く打てるのに、コースでは上手く打てないという理由の一つは、実はこれです。練習場では、同じクラブを連続して打てるので、5~6球打てば、人間の優れた運動能力により、そのクラブのテンポに身体が順応できてしまいます。だから、練習場ではナイスショットが出るのです。

しかし、残念なことに、人間の運動能力は、1回の素振りだけでそのクラブのテンポに順応できるほど高くはないのです。コースでは、同じクラブを連続して打つことは稀ですし、本番のショットの前に素振りを5回も6回もすることも稀です(これをすると同伴プレイヤーに冷たい目で見られますから)。

重要なのはクラブセットの調和

フルショットをするクラブがキャディバッグの中に12本あったとしたら、最も大切なことは、その12本の振動数がオーケストラの楽器のように調和していることです。「6本の振動数は自分のスイングテンポに完璧にマッチしているが、 残りの6本の振動数はバラバラである」という状態よりは、「12本全て、自分のスイングテンポにはマッチしていないが、その12本の間では振動数が完璧に調和している」という状態の方が百倍良いです。

(ゴルフクラブ数値.comから抜粋)